menu
ドキュメンテーションを通して子どもの育ちや学びを応援するベネッセコーポレーションの保育ポータルサイト
ドキュメンテーション実践事例集

大規模園でも、全クラスで毎日ドキュメンテーションを実施!園全体にドキュメンテーションが広がった理由とは。

前園長/吉岡善美先生

白百合愛児園

所在地:神奈川県横浜市

分類:認可保育所

対象年齢:0歳児~6歳児

定員:220人

昭和23年に開設された歴史のある園で、園児も220人、職員も50人を超える大きな保育園です。

公園に囲まれた自然豊かな立地で、子どもたちは四季を感じながら過ごしています。広い園庭で子どもたちはのびのびと走り回ったり、どろんこ遊びをしたりして楽しく過ごしています。

歴史もあり、規模もとても大きな保育園。ドキュメンテーションを始めたときには、1部のクラスからのスタートだったそうです。それが、今では全クラス・毎日の活動をドキュメンテーションとして記録しているそうです。

どのように園に広がり、浸透していったのでしょうか。

ドキュメンテーションの取り入れてから園に広がっていくときの様子を、前園長の吉岡先生に具体的に聞きました!

ドキュメンテーションを始めたきっかけ

きっかけは、園内研修の研修リーダー育成しようという目的の、横浜市の研修会でした。

「遊びを通した学びの充実による保育の質の向上」ということをテーマとして、

「ビデオカンファレンス」「フォトカンファレンス」を行いました。

「ビデオカンファレンス」「フォトカンファレンス」というのは、

保育の写真やビデオから、子どもの活動に対して自分なりの読み取りをして、

保育者同士でお互いに読み取ったことを話しあう、というものです。

これにより、保育中には見えていなかった子どもの様子や思いが見えてきたり、

自分にはない視点に気づくことができました。

写真などを見て子どもの活動について語ることが、いかに豊かな保育者同士の対話につながるかということを体感したところで、「ドキュメンテーション」というものもあると聞き、保育者だけでなく保護者との間でも、このような豊かな対話を生み出せるのではないか、と気づきました。

それまでは、その日にあったことをホワイトボードに書いて、お迎えの保護者に知らせていたのですが、

この研修での経験を通じて、そこに写真を付け加えたらいいのでは?というアイディアが生まれました。

これが私どもの園でのドキュメンテーションのはじまりです。

ドキュメンテーションの始まりは1学年から

ドキュメンテーションを始めたときは手探りでした。でも、子どもの姿が見えたことで、どんどんドキュメンテーションが広がっていきました。

最初は、年長クラスだけのスタートでした。

年長クラスは2クラスあって、先生が4人います。

1人1台カメラを渡して子どもたちの写真を撮ることにしました。

ところが、

「何を撮ればいいのかな」

「保護者にも見せるなら、全員撮らなきゃだめですよね」

「1日の中であったこと、全部網羅しなきゃだめですか?」

・・・と疑問が満載。

最初はさまざまな写真をいっぱい撮って貼ってみましたが、

子どもたちがどうやって活動を充実させていったかがぼやけてしまう。

そんなスタートでした。

ドキュメンテーションで起こった変化

撮影をして写真を見返す中で、

「この遊びをした後、こっちの先生のところでこうやって遊んでいたんだ」

というように、これまで見えていなかった遊びのつながりや発展が見えてきました。

そうやって子どもの姿が見えてくると、

「じゃあこの子は次に何をするのかな?」

「次にこれを置いたら、もっと遊びが面白くなるんじゃない?」と

先生も子どもと一緒にワクワクしながら保育ができるようになったんです。

また、保護者からのある言葉をきっかけに、ドキュメンテーションを取り組むことに勢いが出ました。

私どもの園では年長さんでも連絡ノートを書いています。

でも、ドキュメンテーション形式で今日の活動を貼りだすようになって、しばらくたったある日

「先生もう連絡帳書かなくてもいいですよ」

「伝わってくるから連絡帳はなくても大丈夫」といってくれた保護者がいました。

このことが保育者の自信になり、そこからドキュメンテーションを取り組むことに勢いが出たように思います。

保護者にも起こった変化

保護者の中でも他の子どもへの関心が高まりました。

これまでは、保護者の方が自分の子以外の子どもの姿を見るのは送り迎えの一部の時間だけでしたから、バタバタ走り回る子や乱暴な子をちょっと引いてみてしまうということもありました。

でも、ドキュメンテーションを通して

「昼間この子って、こんな面白いことをしてるんだね」

「こんなふうに友だちと遊んでいるんだね」

ということを知ることで、偏見のようなものが消えていったように思います。

他のクラスへの広がり

他のクラスへドキュメンテーションが広がっていったきっかけは、ドキュメンテーションを作りながら保育をする年長クラスの様子を見ていた、4歳児クラスの先生でした。

コーナー遊びは、ドキュメンテーションを始める前からやっていたのですが、

年長クラスでコーナーごとのドキュメンテーションを作り始めた後から、

遊びが深まったり、多くの子がコーナーを活用する様子が顕著になってきました。

子どもの興味関心に合わせてコーナーがどんどん増えて、

午睡用の布団を敷くのもやっと・・・というくらいに遊びが盛り上がっていったのです。

そんな中、並びの部屋で保育をしている4歳児クラスの先生から、

「年長クラスの先生たち、面白そうなことやってる」という声が出たんです。

ドキュメンテーションの掲示を見て、

・年長クラスの先生が楽しんで保育をしている!

・子どもの遊びを一緒におもしろがっている!

と思えたのだそうです。

また、ドキュメンテーションは保護者に保育の様子が伝わりやすい手段だと思い、関心をもったそうです。

職員が50名以上いて、なかなか他のクラスの動きも見えず、

会議でも各クラスの細かい運用の話まではしないのですが、

並びの部屋から見ても、ドキュメンテーションの効果が伝わったようです。

4歳児クラスの先生から「私たちもドキュメンテーションをやってみたい」といわれ、

「やってみたいと思うんだ。うちの保育士、すごいぞ」

って思いましたね。

そんなきっかけで、他のクラスにも広がっていきました。

ドキュメンテーションの作り方、活用のしかた

今は、私どもの園では、保育者1人に1台カメラを渡しています。

そのほうが、子どもの姿を追いやすいし、印刷にも便利なのだそうです。

また、非常勤の先生にもカメラを持ってもらっています。

非常勤の先生は、活動の中に入り切れない子どもたちに寄り添ってくれることも多いです。

そういう子どもの姿を撮ってくださることで、「この子、こんな素敵なところがあったんだよね」

というふうに、常勤の先生たちが見きれなかったところまで見えるようになりました。

写真だからこそ、あとから見返した時に気づく子どもの姿があるのだなと思います。

掲示するときにも、見ていただきたい人を意識して、掲示する場所を工夫しています。

普段は子どもたちの主体的な遊びをもとに保育をしていますが、行事の位置づけが難しいと思っていました。

自分たちで意見を出し合って決めていければ主体的な活動になりますが、

年齢によってはやはり保育者がお膳立てをしなければできないこともあります。

行事は結果だけが見えやすいものですが、

「日々の保育と、発表会のつながりを保護者に見てほしいね」

「ドキュメンテーションでプロセスを見せていこう」

という話が保育者から出ました。

当日までの流れを、クラスだけではなくて園全体の保護者に見てもらいたい!

ということだったので、ホールや廊下など、多くの保護者が通る場所に貼ることにしました。

そのクラスの初めの活動からどのように発展して、今の姿になったか。

行事だけではなく、年間の活動の様子を振り返れるようにしています。

印象深い事例

ドキュメンテーションを始めて印象深かったこととして、保護者が「アルバイト」として来てくれた、という出来事がありました。

保護者の協力によって活動が発展した事例です。

近所の公園には、夏になると自動販売機が置かれるんです。

それに関心をもった子が、「自動販売機を作りたい」と言い出しました。

自動販売機に補充をするところを見せてくれた業者さんがいて、子どもたちはちゃんと構造をわかっていました。

最初は段ボールで作りました。

中に入れたのは、ペットボトルに色水を入れたもの。

重たいので、段ボールの自動販売機はすぐに壊れてしまいました。

そこで、「壊れないようにするにはどうしたらいいと思う?」と保育者が声をかけたところ、

「木で作らなきゃダメだよ」と子どもが言いました。

「木で作るかあ・・・」と、保育者は思ったそうです。

何とか木材を配達してもらい、木製の自動販売機づくりに取り組んでみましたが、

子どもたちと保育者だけでは技術が伴わないのでうまくできません。

どうしたらうまく作れるか、みんなが頭を悩ませていた時に、一人の子がいいました。

「アルバイト募集しよう!」

実は以前、ごっこ遊びをした時に「アルバイト募集」をしたことがあったのを思い出したようです。

流しそうめん、わんこそば、同時にお店屋さんごっこをしましたが、わんこそば屋さんにはお客さんが少ない・・・そこで保育士や活動に参加していない子に、お客さんを呼ぶPR係として看板を持つ「アルバイト募集」した経験があったのです。

それ以降、他のお店屋さんごっこでも、人手が足りないときは「アルバイト募集」の張り紙が登場することがありました。

「だからこれも、アルバイト募集って出せばいいよ」と、子どもの発案で張り紙を出しました。

それを見たお父さんが「僕、来ます」といって「アルバイト」に来てくださいました。

※実際は「アルバイト」ではなく、無償でのご協力です。

工具も色々持ってきてくださって、ずいぶん手伝ってもらいました。

それを見て、送り迎えに来ているおじいちゃんや、他のパパなど、

たくさんの人が集まって、自動販売機を一緒に作り上げました。

また、その時に手伝ってくださったことがきっかけとなり、

ご自身のお仕事の話をしに来てくださったお父さんもいらっしゃいました。

そして、その話を聞いた他のお母さんも・・・と広がっていったんです。

まとめ

ドキュメンテーションが園全体に広がった理由とは

大規模な園で、歴史も長い園ですと、ドキュメンテーションのような新しいことを取り入れるというのは、ハードルが高いように思います。

ドキュメンテーションという新しい手法が園全体に広がった理由は、先生たちがドキュメンテーションで保育を楽しむようになったこと。そして、楽しく保育をする様子が、保護者だけでなく、他のクラスの先生にまで伝わったことだとおっしゃっていました。

園全体で研修をして一斉に始めなくても、だんだん広がっていくこともあるのですね。やる気の高い先生のクラスからまず始めてみる、というのも、良い取り入れ方だということがわかりました!

ドキュメンテーション実践事例集