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コドモンの保育ドキュメンテーション活用事例集

乳児クラスでも、子ども主体で活動が広がる!ポイントは、写真から見える子どもの興味関心。

さくらのつぼみ保育園

さくらのつぼみ保育園

さくらのつぼみ保育園の先生がた

(左)外村先生/(右)井上先生

さくらのつぼみ保育園

所在地:神奈川県大和市

分類:小規模保育園

対象年齢:0歳~2歳児

定員:9名

マンションの1室を改装し、0歳~2歳の乳児さんのみをお預かりして、家庭的な雰囲気で保育をしています。園から徒歩5分の所に森があり、自然の中での遊びを活発に行っています。

5年前の開園当初から作っていたドキュメンテーションを、手作りからCoDMONに切り替えたさくらのつぼみ保育園さん。

「乳児クラスではドキュメンテーション作りは難しいのでは?」と思うかもしれませんが、さくらのつぼみ保育園さんでは、とても素敵な方法で、乳児さんたちの活動をドキュメンテーションのかたちで記録に残していらっしゃいます。その取り組みをご紹介します。

ドキュメンテーションをCoDMONで作るようになって語り合う時間が増えた

CoDMONを使う前は、日誌・連絡帳・ドキュメンテーションなどを全て手書きで作っていました。事務仕事に時間がかかり、ドキュメンテーションは休憩時間を使って作るような日々。振り返りと次の環境を準備する時間も少なく、ドキュメンテーションの良さは感じながらも、続けていくうえでは業務負担の面で課題がありました。

それが、CoDMONでドキュメンテーションを作り始めてみたところ、毎日の活動の記録をつけることで、日誌にも、ドキュメンテーションにも展開ができるようになりました。これまでのように、日誌や計画のほかに、ドキュメンテーションを手作りする必要がなくなったので、時間削減につながっています。その時間で、毎日午睡の時間に保育の振り返りをすることができるようになりました。

この振り返りの時間の中で、「保育ウェブ」とよばれる手法も活用しながら、子どもの活動の広がりを予想して、次の日の環境設定や配慮事項まで話すことができています。

「保育ドキュメンテーション」で業務の負担を減らせたことで、今までやりたくてもなかなかできなかった「日々の子どもの姿から次の保育をつくっていく」ということが実現できるようになったことがとても嬉しいです。

また、このように全員で子どもの姿について語り合うためには、風通しの良いフラットな関係性が大事だと気づき、経験や立場による壁を取り払って話せるような雰囲気づくりも意識するようになりました。

【活動の広がり①】野菜や実に夢中な子どもたち

子ども達の興味がどんな風に広がっていったか、一つの事例をご紹介します。

ある日のことです。子どもたちは園庭で育てたイチゴやトマトを収穫し、朝のおやつとして楽しみました。 絵本や図鑑と見比べながら、実際に実がだんだん大きくなったり、色が変化する様子を楽しみにする場面も。この日の「自分で収穫して食べた経験」から、子どもたちの関心は「畑の野菜の観察」と「実さがし」に向かっていきました。

それから数日、S君の「園庭で実をさがしたい」という言葉から園庭に出てみると、落ちている実を見つけました。すぐに保育室に持ち帰り、みんなでにおいを嗅いだり、断面を観察。大きなスモモのようですが、子どもたちからは「うめだよ」「お庭にあったの」「いいにおい」などの感想が聞かれました。

また別の日には、お散歩の道中でも落ちている柿や梅、さまざまな実を発見し、拾いながら進んでいきました。 畑ではジャガイモやネギも発見。「日向ぼっこかな」と、子どもたちは想像を膨らませます。森に到着してからも、さくらの実を並べたり、ヘビイチゴを見て「おいしそう、食べられない?」といった声も出ていました。

桑の木の下では桑の実さがしが始まります。保育者が口に入れる様子をみて、子どもたちも口に一つ。「あまい!」「もういっこ」の声が響きます。近くを通りかかったご夫婦が一緒に実を探してくれる場面もあり、地域との交流も自然と生まれました。

見つけた実や野菜の写真は、保育室の子どもの目の高さに掲示しました。見つけただけでは終わらずに、写真を見ながら「きのう見つけたね」「おそとにあったね」など、子どもたち同士でも話す時間が増えていきました。

翌日以降の活動でも「また見つけたい」と声が上がるなど、子どもたちの意思表示のきっかけになりました。

【活動の広がり②】「実さがし⇒カタツムリ⇒ウンチ!」関心は広がる!

実さがしで森探索を楽しみながら、身近な生き物にも関心が広がっていきました。

6月、でんでんむしの歌を歌うようになったころ、「森でカタツムリさがす」「カタツムリいるかな?」といった声が聞かれるようになりました。いつものように桑の実さがしに行くと、葉っぱの上にカタツムリを発見。子どもたちと相談して、一緒に飼ってみることにしました。子どもたちは親しみをもって観察したり、声をかけたりしていました。

カタツムリが好き。でも実際に触るのは怖い様子のMちゃん。他の子が触る様子を見て、自分も触ってみようとしますが、やはり怖くて触れません。その日Mちゃんは、カタツムリが食べやすいように、エサを小さくちぎってケースに入れてあげたり、少し遠くからカタツムリを観察していました。

次の日、カタツムリを触れずに葛藤していたMちゃんは、カタツムリと触れ合うS君の姿を見て勇気を出して殻に触ってみます。一瞬触ったあとも、怖くてその場で足踏みを繰り返していましたが、なんども挑戦し、触れるようになりました。友だちの姿を見て自分も挑戦しできるようになった達成感や、カタツムリへの愛着も深まったできごとでした。

その後も、夏野菜や、森で見つけた実を「食べるかな?」とカタツムリのケースに入れるなど、関心を向けていた「実さがし」と「カタツムリ 」が繋がる場面も見られました。

現在はカタツムリのウンチの存在にMちゃんが気がついたことをきっかけに、生き物のウンチについての興味が広がっています。カタツムリは食べ物でウンチの色が変わるので、野菜を変えて色を観察してみたり、ウンチの絵本に関心を示して読んでいる姿も見られています。

「子どものまなざしの先」に見えるもの

私たちは、子どもの様子だけでなく、子どもが見つけた物や、一緒にみた風景など、「子どものまなざしの先にあるもの」も写真に残して記録するようにしています。

当園でお預かりしている子ども達は、すべてを言葉にできないながらもいつも思いを伝えようとしています。その子のまなざしの先にあるものに着目してみると、そこにはちゃんと「その子の気持ち」を感じ取れることがあるのです。

例えば、下の写真は小石が大好きなRくんという2歳児の男の子の手の中を撮影したものです。お散歩の際のRくんは、途中で立ち止まって石拾いをしながら進むことが多く、好きな石がみつかると交換しながら進んで行きます。

この日も小石がたくさん見つかり、帰りは疲れたのか、バギーに乗ると言って保育園まで戻りましたが、その手にはしっかりと小石が握られていました。

保育園に着くと、大事ににぎりしめた手の中を見せてくれたRくん。彼の小石への気持ちが伝わり、愛おしい気持ちになり写真を撮りました。

「子ども達が大事にしているものを保育者も大事にしたい」

「その子の好きなものは探求していけるように応援したい」そんなふうに思っています。

また、自分の好きなもの、好きなこと、どんな個性があるのかという記録は、今だけでなく将来のその子に生きてくると思います。「こんなことが好きだったんだ」「こんな遊びをあの子としたな」「楽しかったな」という記録と記憶の積み重ねが、愛された感覚とも重なって、子どもたちの人生を生きやすくするのではないかと思っています。

今後も、子どもたちがまるごと・ありのままを受け入れられた経験を、ドキュメンテーションという形で可視化して残していきたいです。

編集後記

子ども主体の保育に欠かせないのは、フラットな「対話」

さくらのつぼみ保育園さんでは、フラットな「対話」ができる雰囲気を意識してつくっているそうです。

例えば、保育について振り返り、次の日の環境設定について考える時間も、経験や立場による壁を取り払い、それぞれの気づきを話すように意識しているそうです。様々な見方をする先生がいるからこそ、多角的に子どもの姿が見えるというメリットがあるそうです。

「正解」を求めてしまったり、「こんなことを言ってもいいかしら」と躊躇したり…そんなふうに思うこともありますよね。でも、違う視点をもった人がフラットに話し合うことで、今までは見えなかった子どもの姿が見えてくることもあるかもしれません。ドキュメンテーションを囲んで対話をするときは、「否定せずに、ポジティブに認め合う」ことで、フラットな対話もしやすくなるのかもしれませんね。

また、保育者だけでなく、保護者のかたともフラットに対話していくを意識しているそうです。夏には、子どもたちが楽しめそうな遊びについてのアイデアを保護者から募ることも試してみたとのこと。実際に、うちわづくりなど、保護者のかたのアイデアを保育に取り入れたそうです。

良好な人間関係のもとで保育をしよう、というさくらのつぼみ保育園さんの姿勢が、とてもあたたかくて素敵なエピソードでした。

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