所在地:広島県広島市
分類:認可保育所
対象年齢:0歳児~就学前
定員:116人
今年で開園6年目。そばに川があるため川辺をお散歩コースにしたり、泥遊びを積極的に行ったり、自然の中で本物に触れながら遊びこめる活動を多く取り入れています。「見守る、待つ」ということを意識しながら、自分で考える力を育み、子ども主体の保育を大切にしています。
手作りのドキュメンテーションに取り組んでいたみどりの森みらい保育園さん。CoDMONでドキュメンテーションを始めてみたところ様々な気づきがあり、子どもだけでなく保育者の成長まで感じられるようになったといいます。
先生や子どもの気づき・わくわくが詰まったドキュメンテーションの取り組みもご紹介します!
(主任:森脇先生)ドキュメンテーションを始めるまでは、保護者への連絡は、連絡帳・不定期に更新するブログ・写真を印刷して紙に貼り、子どものつぶやきなどを書いたものを貼り出していました。また、幼児では連絡帳を毎日書かない代わりに、クラスごとにホワイトボードに活動の様子を手書きして掲示していました。
そんな中で、昨年度、同じ法人の職員が大豆生田先生の研修会に参加し、ドキュメンテーションのおもしろさ、大切さを知ったことで、法人全体でドキュメンテーションへの学びを深めようという動きがうまれました。そして行われた法人合同のドキュメンテーション研修を経て、手作りでドキュメンテーションを作ってみたのです。手作りは職員によって味はでますが、写真選ぶ・切って貼る・レイアウトを決めて描くなど、職員によって得意不得意があり、時間もかかりがち。毎日の継続は難しく、不定期で作成していました。
以前から登降園管理などでCoDMONを利用していましたが、ドキュメンテーションを作れると知り興味をもちました。自動でレイアウトされる・パソコンで作れる・保護者にアプリで配信できるなど、メリットが多いと感じ、使ってみることにしたのです。
最初は「慣れるための期間」とし、1週間に1回ほど作ってみることに。保護者の方にも見えるように「お試し中」という形で貼りだし、感想を聞いていきました。保護者の方からは「ホワイトボードは文字だけだが、写真付きだと活動の様子が想像しやすくよくわかる。」など好評な意見を多くいただいたことが、励みにもなりました。
このお試し期間中、それまで手書きしていた週案などの帳票の見直しを行い、CoDMONで作ることでドキュメンテーションと連動させられるように準備をしました。
お試し期間からひと月半が経った頃、本格的に保育ドキュメンテーションの運用をスタートしました。
毎日記録を作り、保護者への配信も始めたので、幼児クラスではホワイトボードの運用を廃止。
見直しを行った帳票も、CoDMONで作り始めました。週日案がドキュメンテーションと連動していることで、「一日の振り返り」から「次の日の計画」へのつながりも見え、保育の継続性も高まっています。
しかし、導入してから、すぐに作れるようになったわけではありません。職員同士で話し合い、改善策を考えることを繰り返して、今の保育になってきたのです。
まずは職員で話し合って、ドキュメンテーションについての意識を園内で統一することから始めました。私たちは、「子どもたちの輝いている姿、面白いと思う場面をとらえよう!」と決めました。また、初めての年なので、まずは一年を通して少しずつ慣れていこう。楽しんで作れるようにしようということを目標に取り組むことにしました。
園内でドキュメンテーションの研修も行いました。私が参加したCoDMONのドキュメンテーションの研修で学んだことを職員に共有しました。日々出てくる悩みや疑問点について職員間で話し合う時間をつくり、モヤモヤを声にだしていくようにしました。また、他クラスのドキュメンテーションをいつでも見られるようにファイリングし、子どもを見る様々な視点や観点に触れる機会をつくりました。
ドキュメンテーションを毎日書いてみると様々な壁にぶつかりましたが、職員同士で語り合ったり、学び合ったりしながら、その壁を乗り越えていきました。
例えば、「タイトルを考えるのが難しい!」という壁。
今日やったことではなく、子どもの発した言葉や引き付けられる言葉を意識してみることにしました。例えば、「公園で遊んだよ」ではなく、「公園で見つけた宝物!」となるイメージです。
「作るのに時間がかかってしまう」という壁には、継続することで慣れていくことがポイントだという話が出ました。それまでは職員同士で協力し、給食中や午睡の時間などに抜けて集中できる時間を作り、乗り越えています。また、写真をたくさん載せるのではなく、子どもの姿が伝わる枚数で大丈夫だよねという話も出ました。
いくつか、ドキュメンテーションの事例を紹介します。一つ目は、子どもの言葉に「面白い!」と思ったことから追っていったドキュメンテーションです。
きっかけの言葉は「雨あったよ!」でした。まさに子どもらしい表現の仕方ですよね。そこから雨を捕まえようとしたり、手を動かすと消えてしまうことに気付き、楽しさや、不思議さ、面白さを感じています。
雨は子どもたちにとって遊び道具の一つです。
普段だと見逃してしまいそうな行動や、つぶやきも、ドキュメンテーションを始めてから、よく見て聞いて追うことを意識するようになりました。「なんだろう?」と子どもたちが試してみたり、考えていることを読み取りながら見守ることで、子どもって凄いなあと子どもから教えられることもたくさんあります。
次に紹介するのは1歳児のSちゃんを追ったドキュメンテーションです。成長の記録として、一人を追うドキュメンテーションも大切にしています。
この時なぜSちゃんを追ったか、作った保育士に聞くと、普段あまり自分から水に触れることが少なかったSちゃんが、この日は自分から水が入っているタライに入っていったことで、いつもと違う行動に、「何が始まるんだろう?」と展開が気になり、見守っていったそうです。
タライに入ったあと、今度は自分の帽子を洗い始め、洗濯ごっこが始まりました。最後には帽子を上下に振り、乾かす姿が。「タイトルは『せんたくかあちゃん』で決まりだ!」とぱっとひらめいたそうです。また、その姿を見たKちゃんもSちゃんの真似をして一緒に洗濯を始めました。
1歳児の発達として模倣するということが楽しい時期です。このドキュメンテーションには、お父さん、お母さんの姿もよく見ているんですよというメッセージも込められています。
この事例のように、子どもの成長や発達が見える行動などには” ”をいれて、”好奇心” ”模倣”などと文章の中に入れることで、保護者の方からは育児書のようでわかりやすいというご意見もいただきました。また育児に困っている保護者も、発達を知ることで、ただ遊んでいるだけではなく、これが今の育ちなんだという目で子どもを見る事ができ、育児が楽になったという言葉も聞かれました。
保育士自身も発達の文献を参考にしながら、子どもの姿を読み取っていき、保育の質の向上にもつながっています。
この活動には続きがあります。
洗濯に興味関心が出てきた1歳児の姿から、保育士が石鹸や洗濯もの干しなど、さらに子どもたちの遊びが広がるような環境を用意しました。そのように環境を整えたことで、子どもたちがイメージをさらに膨らませることができて、洗濯遊びが発展していきました。
手作りをしていた時には、苦手意識や負荷を感じ、不定期で行っていたドキュメンテーションですが、CoDMONにしたことで毎日続けていけるようになりました。また、振り返りと計画にもつなげることができるようになったので、楽しそうに夢中で遊ぶ子どもの様子を見て、「明日はこうしたら、子どもたちがもっと楽しめるんじゃないか」そんなふうに保育者が考えるようになりました。
子どもの姿をもとに明日の保育を考えることや、保育のつながりの大切さに、改めて気付くことができました。
ドキュメンテーションを始めてから半年後、職員アンケートで自分自身の変化について聞きました。その結果、ドキュメンテーションを通して様々な成長を感じていることがわかりました。
たとえば、子どもを見る視点。
・子どもの言動、思いや心情の意味を考えながら、見守る習慣がついた。
・今まで見逃していた子どもの姿に気付くことができるようになった。
・・・など、ただ子どもの行動を見守るのではなく、一つ一つの行動の意味を捉えていけるようになったという意見が出ました。
保育士同士の関係性についても、職員の語り合い、一体感が生まれていることが見えてきました。
・ドキュメンテーションを通して、お互いの保育観を知ることができる
・「今日○○くん、こんな姿があったよ」と他クラスの先生が写真を撮っていたり、エピソードで伝えてくることが増えた。
また、先日監査がありました。その際、ドキュメンテーションを使って保育記録をつくったり、保護者配信をしていることを伝えると、監査員のかたから「子どもが遊びの中から学んでいることがわかりやすい。すごいですね!」と言ってもらえました。
まだ課題もあります。うちの園では連絡帳は別で作っているのですが、やはり業務負荷にもなるため、来年度に向けては幼児クラスの連絡帳を廃止する方向で考えています。そのためにも、ドキュメンテーションの内容を充実させ、保護者の理解を得ていけるようにと考えています。
年度末に1年を振り返ったとき、ドキュメンテーションを見直すことで、子どもの成長はもちろん、自分自身の成長も同時に振り返ることができ、私たちにとって本当に大切な宝物となると思います。
みどりの森みらい保育園さんのお話は、「なぜこの活動を追ったのか」というポイントが明確になっている点がとても特徴的ですね。日ごろから「なんでこの子に注目したの?」「ここがおもしろかったんだ!」と、子どもの姿について会話をされていることがよく伝わってきます。
そして、保育者が「面白い!」と思って追っていくと、その先生にしか作れないイキイキとしたドキュメンテーションになることがよく分かります。園児さんの声が聞こえてきそうなくらい、臨場感のあるドキュメンテーションでした。
また、子どもの心の動きや成長をとても丁寧にとらえていて、監査員のかたが「すごい!」と褒めるのも納得です。保護者のかたにとっても、このように丁寧に見てもらえていることがわかるととても安心するでしょうし、園への、先生への信頼感につながるのでは、と感じます。
保育者自身が成長を実感している点も、とても素敵でしたね。年度末、先生たちがどのように保育の振り返りをされるのか、ぜひまた聞いてみたいと思いました!